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「自傳」をあるく [著]窪島誠一郎

[評者]

[掲載]2016年01月10日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 自伝に本当のことが書かれているとは限らないが、虚であれ実であれ、本人の自発的暴露には違いない。4人の自伝を取り上げ、「『自傳』ほど、読み手にとって作家の余罪(?)を追及する娯(たの)しみのあたえられている読みものはない」と著者は書く。
 幼・少年時代に東京・渋谷周辺で転居を重ねた大岡昇平、強い意思で道を切り開いた相馬黒光ら、「追及」しがいのある人物ぞろいの中、実母を知らず、虚構の中で甘えた室生犀星『性に眼覚める頃』や、美しい母の出自に疑問を抱く山口瞳『血族』への読みには、実の親を捜し求めた著者の体験がにじみ、「余罪」の見つけ方も独特。自伝の書き手たちの人間味が、一層深く感じられるようだ。
    ◇
 白水社・3024円

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