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パクリ経済―コピーはイノベーションを刺激する [著]K・ラウスティアラ、C・スプリグマン

[評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)

[掲載]2016年01月17日

[ジャンル]経済 社会

表紙画像

■複製は悪か、利益と創造の源か

 本書が一貫して主張するのは、コピーは必ずしも創造性を萎縮させるのではなく、むしろイノベーションを刺激するケースが存在することだ。1970年代にビデオデッキが登場したとき、映画産業がこれを撲滅しようと訴えたが、米最高裁は1票差で容認したという。その後、映画産業は縮小どころか、新しいホームビデオ市場でさらなる利益を得るようになった。本書では、著作権が認められていないために、創造活動が活性化しているファッション、料理、コメディー、アメフトの戦術、フォント、金融商品、データベースなどの分野のメカニズムを解析している。いずれも誰かの創造が独占されず、クリエーターの集団によって改良が繰り返され、競争的なプロセスが促進されているのだ。
 ときとしてコピーは流行を生み、オリジナルの宣伝になり、オリジナルへの探求に導く。また分野によっては、法に頼らずとも、創造者コミュニティーの規範が不当なコピーを制御する。コピー禁止の強化と著作権の拡大さえすれば、単純にコンテンツ産業が育成されると思い込みがちだが、本書は説得力ある事例とデータによって異なる実態を明らかにする。
 「音楽と音楽産業は同じものではない」という指摘は印象的だった。なるほど、監視の目を光らせるのは、レコード会社や著作権協会である。クリエーターは金だけが動機で制作するわけではないし、デジタルツールの発達で制作や流通のコストも下がった。現在、体験をコピーできないライブの重要性と収益が増加し、ネットを通じた音楽受容の変革が進む。新しい上映技術を進化させ、映画館の観客を増やしているのに対し、音楽がCDなど正規品の品質を向上させていないのも怠慢かもしれない。パクリを敵視するのではなく、どう付き合い、抱き込むかが、次世代の産業の鍵になるのだろう。
    ◇
 山形浩生ほか訳、みすず書房・3888円/K.Raustiala カリフォルニア大教授、C.Sprigman ニューヨーク大教授。

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