書評・最新書評

童謡の近代―メディアの変容と子ども文化 [著]周東美材(よしき)

[評者]宮沢章夫(劇作家・演出家)

[掲載]2016年01月17日

[ジャンル]社会

表紙画像

■ポップスとアイドル誕生の起源

 本書がまず語るのは、「童謡」を手掛かりにして、その誕生と拡大にメディアがどのように関わってきたかだ。同時に、「子どもの身体」がメディアになにをもたらしたか。こうして本書は、この国のポピュラー音楽史をたどる貴重な論考になる。著者は、「近代日本の大衆的なメディア文化の変容のなかで、子どもの存在は、傍流であるどころか、一貫して中心に位置していた」と書く。大正時代にさかのぼり童謡の起源や系譜を追うだけではなく、新しいメディアが登場するとき、子どもがどのような働きをしていたかを考察する。さらに、「童謡は、日本における都市化や大衆社会化といった複製技術時代の本格的な幕開けのなかで生み出されていった」と語る。つまり、童謡の広がり、それを支える考え方の変容、レコード産業をはじめとするメディアの変化のなかに、いまのポピュラー音楽の要素がほとんど含まれているのがわかる。アイドルはここから誕生した。
    ◇
 岩波現代全書・2700円

関連記事

ページトップへ戻る