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集合住宅30講 [著]植田実

[評者]大竹昭子(作家)

[掲載]2016年01月24日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■見て、感じて、考える歓び

 集合住宅は世界中どれも似たり寄ったりだ。住戸の寄せ集めで中心がなく、象徴的な表情に欠ける。ならそれを逆手にとって集合住宅の共通項である窓、バルコニー、玄関、屋上などで横に切ってみようという発想。そのほうが集合住宅の何たるかが浮き彫りになるところが面白い。
 たとえば戸建て住宅の顔が門だとすると集合住宅のそれは窓。一つ一つの窓に明かりが灯(とも)る夕暮れの光景を思い浮かべればわかる。またバルコニーは外気に接する場のみならず、周辺に対して開かれた表情を示す役をするという指摘もなるほどと思う。
 こうやって世界中の集合住宅の細部が収集され、写真入りで紹介されるが、著者がその目で確かめているから言葉に重みがある。また、前は首を傾(かし)げていたものが時間がたってよく見えてきたりと、批評より対話に近いスタンスで建物を見て、感じて、考える歓(よろこ)びに連れ出してくれる。仏文から建築に移った著者の文章力に負うところも大だ。
    ◇
 みすず書房・4536円

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