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「1945 予定された敗戦」書評 「太平洋戦争史観」をくつがえす

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2016年02月07日
1945予定された敗戦 ソ連進攻と冷戦の到来 著者:小代 有希子 出版社:人文書院 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784409520628
発売⽇: 2015/12/18
サイズ: 20cm/370p

1945 予定された敗戦 [著]小代有希子

 著者は、「日本が戦った戦争とは、勝てるはずのないアメリカを相手にした太平洋戦争のことで、当然の結果としてアメリカに負けた」という「太平洋戦争史観」に対して、この「枠内に入りきらない出来事は山のようにある」として見直しを迫る。たしかに、原爆によって戦争が終わったという認識が定着していく一方で、中立条約を破って参戦したソ連とその影響については、いつのまにか私たちの記憶から欠落していったという視点は注目に値する。ただ、日本の指導者がソ連参戦を予測して描いていたとする、日本敗北後のビジョンについては、さらなる検証が必要だろう。チャレンジングな仮説に今後の研究の深まりと史実の究明が期待される。
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 人文書院・3780円