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2時間で走る―フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦 [著]エド・シーサ

[評者]市田隆(本社編集委員)

[掲載]2016年02月14日

[ジャンル]人文

表紙画像

■「神の頂」に迫る栄光と苦悩

 人間はエベレストに登頂できたが、フルマラソンの記録はいまだ2時間を切れない。その「神の頂」に迫るトップランナーたちの生き様を追ったノンフィクションだ。
 マラソン界をリードするのはケニアやエチオピアの選手。主要なレース前の4、5カ月間は週に200キロ超走る特別練習をしたうえ、本番では常人なら数秒で脱落するハイペースで延々と走り続ける。超人たちが生まれた背景には、高額賞金がかかったレースに挑むことが、貧困から抜け出す唯一の道となっている東アフリカの現状がある。
 頂点を極めながらアルコールにおぼれた末に若い命を散らした選手、過酷な練習に耐えた先の幸福感をかみ締める選手、彼らの栄光と苦悩を長期間の取材をもとに描きつくした英国人ジャーナリストの仕事は尊敬に値する。
 今までマラソンに関心がなく、本書に登場した選手たちを全く知らなかった。だが、今はその走る姿を見たいと熱望している。そういう本だ。
    ◇
 菅しおり訳、河出書房新社・1944円

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