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きみを夢みて [著]スティーヴ・エリクソン

[評者]大竹昭子(作家)

[掲載]2016年02月21日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■アメリカの熱狂と失望の歴史

 スティーヴ・エリクソンの長編小説が邦訳され、文庫版で出た。LAの一家がオバマの大統領当選に湧くシーンではじまる。白人夫婦とその息子、エチオピアから養子に迎えた黒人少女シバの四人家族。少女の生みの親探しをきっかけに、一家がヨーロッパやアフリカで巻き込まれていく出来事が物語のメイン。そこに「よろめきながら物事を行う国」アメリカの熱狂と失望の歴史が編み込まれる。
 過去・現在・未来の時間区分は無視され、あっという間に別の時代や空間に話がワープするという、通常なら混乱の極みになるはずの筋がそうならないのは、独特の“声”を秘めた密度の高い語り形式の力だ。
 根源にあるのは「アメリカとは何か」ということ。実際の国ではなく、人類の実験場としてのアメリカだ。歌が夢の暗喩として登場する。「共通して歌えるような一つの歌があるかどうか」という設問に答えながら、彼の音楽観をも語っている。
  ◇
 越川芳明訳、ちくま文庫・1512円

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