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「へろへろ」書評 笑いと怒りの老人ホーム建設記

評者: 星野智幸 / 朝⽇新聞掲載:2016年02月28日
へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 著者:鹿子 裕文 出版社:ナナロク社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784904292648
発売⽇: 2015/12/01
サイズ: 19cm/283p

へろへろ―雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 [著]鹿子裕文

 腹の底から愉快な気分になりたいけれど、今の世の厳しい現実を見下すような笑いはゴメンだ、とお悩みの方には、本書を勧める。
 認知症の高齢者を管理するのでなく、その混乱にただつき合うという、地域包摂型のケアを行っている福岡の「宅老所よりあい」が、老人ホームを作ることになった。スタッフは建設費1億6千万円を捻出するため、資金集めに奔走。仕事にあぶれてくすぶっていた中年のフリー編集者である著者は、「よりあい」で利用者たちが起こす抱腹絶倒を集めた雑誌「ヨレヨレ」を創刊し、資金を稼ぐ羽目に。
 せっぱ詰まった者たちの能天気なパワーが生き生きと描かれ、読者を高揚させるのだが、かれらを支えているのは、誰にでも老いは来るのだからぼけたって普通に暮らしていいじゃないか、という怒りだ。人生行き詰まったかのように見えても、できることはこんなにあるんだということを、著者は怒りを笑いに変えて教えてくれる。
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 ナナロク社・1620円