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資本の専制、奴隷の叛逆 [編著]廣瀬純

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)

[掲載]2016年03月13日

[ジャンル]社会 国際

表紙画像

■欧州が直面する危機を分析

 南欧の思想家8人へのインタビューと、彼らが最近発表した論考を交互に配し、ヨーロッパがいま直面する危機を分析する。議論の核は、広場での自発的抗議運動から反ネオリベラリズム政党が台頭したギリシャとスペイン。渦中の意見だから各人各様だが、みな「ドイツ的ヨーロッパ」とは明白に一線を画している。南北ヨーロッパは地理的な敵対関係にあるというメッザードラは、欧州連合(EU)内に植民地の構造を見いだす。
 ラッザラートはこれをグローバルかつドメスティックな対立モデルに敷衍(ふえん)、ギリシャ危機とシリア難民問題の関連性を指摘。両者とも植民地化同様、政治・経済・軍事をひとつに束ねた資本=国家複合体と、そこで生活を営む住民との「戦争」なのだという。
 右傾化や若者の貧困、労働者(生かされ搾取される)と奴隷(死ぬまで収奪される)の分断など、他人事(ひとごと)ではない。南欧の思考は、ときに絶望しあるいは妥協し、なお「別」のありかたを探り続ける。
    ◇
 航思社・2916円

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