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鳥打ちも夜更けには [著]金子薫

[評者]

[掲載]2016年03月20日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 自らの町が「架空の港町」と呼ばれることをすこぶる気に入っている住民たちの中で、生きる意味を見いだそうとしてしまった青年のてんまつを描く。「架空の」住民にとって人生は絵空事。表情はどこか上の空。しかし、蝶と花畑の「楽園」の復活をもくろむ新町長の元で始まった、「鳥打ち」という鳥の駆除業に就いた青年は、いつしかその職に疑問を抱く。多くを考えないよう忠告を受けるも、芽生えた疑問はふくらむばかり。ついに新町長に背いて仕事を放擲(ほうてき)し、自らが思う道を歩み始めるのだが……。青年の苦悩に触れた時、自分自身が、考えることを忘れた架空の住民になってはいないだろうかと自問せずにはいられない。
    ◇
 河出書房新社・1620円

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