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やがて海へと届く [著]彩瀬まる

[評者]

[掲載]2016年03月20日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 「信じるとは、なんだろう」。自分や他者の死に真正面から向き合い葛藤する登場人物の心情に引き込まれる。
 震災の前日、ふらりと出かけたきり行方不明になった親友すみれ。彼女に思いを寄せ続ける真奈は、すみれの母やかつての恋人のようには彼女の死を認められず、「最も深い苦しみだけが、本当のものであるように思っていた」。すみれもまた、おそらく生者とは異なる世界で、帰る場所を探してただ歩き続けている。置かれた状況を徐々に受け入れていく2人の視点が重なる一瞬。その切なさが胸を締め付ける。
 際立つのはすみれが行き着く波打ち際の美しく幻想的な描写。全てを肯定するような死生観に圧倒される。
    ◇
 講談社・1620円

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