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「文系学部廃止」の衝撃 [著]吉見俊哉

[評者]蜂飼耳(詩人・作家)

[掲載]2016年03月27日

[ジャンル]教育 社会

表紙画像

■「目的や価値の軸」創造する知

 昨年六月に文部科学省が出した「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」の通知は、各メディアによって「国が文系学部を廃止しようとしている」と報じられ、大きな波紋を広げた。著者は騒動を分析し、その背景にある「文系は役に立たない」という社会的通念に異を唱える。文系の知は「目的や価値の軸」を発見したり創造したりする性質を持ち、長期的には役に立つと強調する。コンピテンス(活用や処理の能力)を重視する教育が広がる一方で、その核となるべき知識・教養への関心が減退し、空洞化しているとの見方は、文系の価値の再考をうながす指摘といえるだろう。
 「人生で三回、大学に入る」などのユニークな提言もある。大学が開かれたものとなり、人類に奉仕する普遍的な価値を創造する場であり続けるためには何をするべきなのか。理工系偏重の環境の中で、文系の有用性をどう説明すればよいのか。本書には、明るいヒントが詰まっている。
    ◇
 集英社新書・821円

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