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カルチャロミクス—文化をビッグデータで計測する [著]エレツ・エイデン、ジャン=バティースト・ミシェル

[評者]

[掲載]2016年04月03日

[ジャンル]IT・コンピューター 社会

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■現代人が手にした新たな「道具」

 西暦2000年までの二百年間で、ガン、エイズ、インフルエンザ、三つの単語のうち、いちばん話題になったものはどれだろう。
 今はこうした問いに手軽に答えてくれるウェブ・サービスがある。2010年に公開された、グーグル・Nグラム・ビューワーである。基本的にこのサービスは、過去に英語で発表された書籍をデータ化し、単語の統計をとることができるようにしたものだ。
 ビッグデータという単語は聞きあきたという人、はじめてという人がいるはずである。しかし、自分には関係ないと思う人でも、携帯電話を通じて自分の位置情報を提供し、渋滞情報の集計に一役買っているなんてことはめずらしくない。
 本書はこの、単語についての統計を見るサービスのもととなった研究に取り組んでいた二人によって書かれた。開発の経緯と直面した困難、成果が当事者の視点から語られている。
 本に出てくる単語の統計と言われても、国語学者しか興味を持たないような地味な語の変化くらいしかわからないのではと考えるのは早計である。本書では豊富な例示がなされており、第二次世界大戦期における言論弾圧があぶり出されてきたりする。
 なによりも重要なのはこのサービスが、誰でも家にいたまま利用可能なことだ。本書に登場する、人類史上はじめて知られることになった結果は、このサービスを利用することで、誰にでも発見できることがらなのだ。小学生が夏休みの自由研究に使うことだってできる。
 ものづくりにおける道具の重要性ははかりしれない。なにかを考えるときの道具についても事情は似ている。紙、鉛筆、万年筆、コンピューター、インターネット。
 冒頭の問いが気になった方は、実際にサイトにアクセスし、自分で調べてみるとよい。そうして、日本語版がないことの得失について考えてみると面白い。
    ◇
 Erez Aiden 米ベイラー医科大学助教。Jean−Baptiste Michel 米ハーバード大学準研究員。

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