書評・最新書評

評伝レヴィナス—生と痕跡 [著]サロモン・マルカ

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)

[掲載]2016年04月03日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

 友人や同僚、捕虜収容所の同室者、教え子や師、家族の証言——本人の言葉も引用されるが、むしろ他者が語り、他者から辿(たど)られるレヴィナスの人生と思想。多大な影響を与えた哲学者をこれほどわかりやすく、面白く読めるとは。
 レヴィナスが生まれた20世紀初頭のリトアニアにはユダヤ人に寛容でリベラルな空気があったという。ロシアや東欧の多様な文化が混在し、家での会話はロシア語、6歳からヘブライ語を学ぶ。ブランショ、フッサール、カッシーラー、デリダらとの交友、とくにハイデガーへの複雑な思いは重要。彼の「倫理なき存在論」に対し「存在から脱出して倫理を第一哲学とすること」がレヴィナスの問題だった、とリクールは語る。
 冗談好きで小言が多く、でもつねに気遣いの人だったと教え子である著者はいう。「隣人」パレスチナへの態度をイスラエルに問う発言もあった。人生と思想が一つであったその姿勢を、省みて考えることは多い。

関連記事

ページトップへ戻る