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戦争を悼む人びと [著]シャーウィン裕子

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2016年04月10日

[ジャンル]歴史 ノンフィクション・評伝

表紙画像

 戦場体験を語り継ぐには勇気と理性が必要だ。それから逃げるには「そんな史実はない」と遁辞(とんじ)を弄(ろう)することだ。本書の行間に流れるのは、そういう歴史修正主義者への怒りである。
 著者は大学卒業後、米国、スイスに在住、現在は英国に住む。アジア・太平洋戦争下の日本軍による元英国軍兵士への苛酷(かこく)な虐待を知り、2010年以後、しばしば日本に戻って元兵士たちの声を聞いた。それが本書の第1部に収められている。中国帰還者連絡会(中帰連)の会員ら6人だが、中国と南方戦域での虐殺、特攻・重爆撃などその内容はおぞましい。平凡な庶民が「東洋鬼」と化す心情を詳しく確かめている。
 第2部はこうした加害の記憶を受け継ぐ人たちの証言が中心になる。戦犯の息子と英国軍捕虜との交流が紹介されている。著者は、「日本軍は命を大事にしなかったんだよ、自国の兵士をも含めて」との元日本兵の言にこだわる。そこに海外在住者の視点がある。

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