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スーザン・ソンタグの『ローリング・ストーン』インタヴュー [著]ジョナサン・コット

[評者]宮沢章夫(劇作家・演出家)

[掲載]2016年04月17日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■回転しながら引き出す「素の私」

 一読すると、スーザン・ソンタグに向かって、ジョナサン・コットがインタビューしているかのようだが(というのも、七〇年代、「ローリング・ストーン」誌に短縮版が掲載された経緯があるからだ)、こうして一冊の本として読むと、これはあきらかにソンタグとコットの対話だ。
 日本版も存在する「ローリング・ストーン」誌を簡単に説明するのは難しい。適切とは思えないものの、「ポピュラー音楽を中心にした、政治・文化誌」と書くのがふさわしいのではないか。掲載される記事の幅は広い。批評家のスーザン・ソンタグのインタビューが掲載されたことを私は知らなかったし、ソンタグと繋(つな)がりがあったことに、同誌の性格が顕(あらわ)れているのを感じる。
 インタビューは「ローリング・ストーン」のためというより、尊敬する作家、批評家としてのソンタグの声を書き留めるコットの希望だったと想像する。とはいえ、ソンタグが語る芸術形式における「隠喩」「断片」「性差」という言葉から、ソンタグの芸術上の主張をどう理解したらいいか戸惑う。けれどいつまでもそこにとどまらず素早く読むほうがソンタグにはふさわしくはないか。「ローリング・ストーン」をサブカルチャー誌と定義するとしたら、そこでソンタグが「隠喩」や「性差」について語るのと同時に、自分と「ロックンロール」との出会いを語るのは、この雑誌の作り出す空間、あるいは、ジョナサン・コットのソンタグを十全に理解した上での質問、言葉、声、それらがロックンロールのように、どこかべつの場所へ回転しながらたどり着こうとしていると思える。
 ソンタグは言う。「素(す)の私、生き物としての、沈黙している私に出会ってほしいと思う……」と。それはコットによって、十分引き出されたのではないか。それこそが、「ローリング・ストーン」でスーザン・ソンタグが語る意味だ。
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 木幡和枝訳、河出書房新社・2376円/Jonathan Cott 67年にアメリカで創刊された「ローリング・ストーン」誌の初代ヨーロッパ担当編集者。

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