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乱舞の中世 白拍子・乱拍子・猿楽 [著]沖本幸子

[評者]蜂飼耳(詩人・作家)

[掲載]2016年04月17日

[ジャンル]歴史 アート・ファッション・芸能

表紙画像

 中世初期に流行した即興的な舞、乱舞。その中で、リズミカルな芸能として登場したのが、白拍子・乱拍子だ。これらは、いまでは滅びたが、現代に伝わる能の根源でもある〈翁(おきな)〉の成り立ちに、深く関わっているという。即興舞が次第にある形を持った芸能へと展開していく過程を、著者は丹念に追いかける。
 白拍子の最大の特徴は、それまでの催馬楽(さいばら)や今様などの歌謡が「歌ふ」といわれたのに対して、白拍子を歌うことは「かぞふ」といわれ、区別されたことだという。拍を数え、物事を数え上げるように並べていく。そんな「かぞふ」芸能が〈翁〉の生成に影響を与えたであろうことを、著者は、いまも各地に伝承される民俗芸能の〈翁〉に手掛かりを求めて論じる。核心に迫る筆致は感動的だ。
 中世の乱舞の芸能が、いまに伝わる能楽に、どのように包含されているのか。専門的な事柄もわかりやすく描き出されていておもしろい。舞は時を超える。
    ◇
 吉川弘文館・1836円

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