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ルポ 同性カップルの子どもたち―アメリカ「ゲイビーブーム」を追う [著]杉山麻里子

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)

[掲載]2016年04月24日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■幸福な家族へ権利獲得の道のり

 大都市から先住民居留地まで、国内外でいくつかの土地に滞在し、確信したことがある。同性愛者は世界中にいる。どんな社会・時代にもいる。つまり、それが人間ってものなのよ。
 といってもやっぱり身近にはいないし、「一部の特殊な人たち」だよね、という人は多い。わたしもそうだった、と率直に認めながら、著者はニューヨークで子育て中に出会った同性カップル家族に、もっと知りたい、と取材を始める。息子の同級生にはお父さんが2人おり、つい「常識」で大丈夫かなと心配しながらも、きめつけず具体的に調べていくところが、母であり記者である人ならでは。日本の現状を扱った章もあり、こういう話に戸惑いを覚える人にこそお薦めの本だ。
 今アメリカは空前の「ゲイビー」(同性カップルの子ども)ブームらしい。ゲイビーを描くTVドラマも増え、ここ10年で子育てする同性カップルは倍増。昨年、全米で同性婚を合法と認める判決が出た。差別に抗(あらが)い訴訟や抗議を重ねて勝ち取られた同性婚の歴史は、家族としての権利獲得の道のりでもあったのだ。
 同性カップルが子どもを得る方法は複数ある。アメリカでは発達した生殖ビジネスの利用もそのひとつ。しかし高額医療で得られるわが子の背後には、危険と引き換えに学資や生活費を得る代理母も存在する(代理母との良好な関係を継続する例も多いそうだが)。養子縁組もポピュラーな方法だ。日本とは事情が異なり、同性カップルに限らず養子はよくあることなので隠さずオープンにする人が多い。子どもに事実を肯定的に伝えるには、似た状況の家族を描いた絵本などが有効という。物語こそ人間が自分と世界の折り合いをつける最古にして最良の方法、まさに必要不可欠ね。
 幸福な家庭はどれも似ている、と『アンナ・カレーニナ』の冒頭にはありましたが、トルストイさん、こうしてみると幸せな家族もいろいろみたいですよ。
    ◇
 岩波書店・1944円/すぎやま・まりこ 朝日新聞社会部記者。本紙、AERAなどで教育、子育て、家族問題などを中心に取材。

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