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日本語を作った男―上田万年とその時代 [著]山口謠司

[評者]円城塔  (作家)

[掲載]2016年05月01日

[ジャンル]人文

表紙画像

 現在、江戸時代の和本をすらすらと読める人の数はそう多くない。文章はむずかしく見え、それ以前に文字が読めなかったりする。
 このむずかしさは、明治大正時代の本を読むときのむずかしさとは格段に違い、日本語に激変が起こったことがうかがわれる。
 副題の上田万年は、この激変期に活躍した国語学者、言語学者。国として日本語のあり方を検討しなければいけない時代に彼は生まれた。
 本書の話題は、方言や、かな遣い、漢字廃止論、言文一致など幅広く、それをめぐる学者や作家たちの議論を紹介する。上田万年の伝記というよりは、それぞれの話題に上田万年が顔を出すという形である。
 美しい日本語をつくるといっても、その整理にこれだけの分野の人々がかかわってくるのが見所(みどころ)である。
 時代というものの大きさは、これだけの厚さをもつ本書であっても、まだそのほんの一部を眺めることができただけであることからも知れる。

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