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グローバライズ [著]木下古栗

[評者]大竹昭子(作家)

[掲載]2016年05月08日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 この十二本の短編を読むことは、映画を十二本撮るのに似ている。
 行為や情景のみが描写され、その意味は明かされない。かと言って、何も起きないわけではなく、思いもかけない突飛(とっぴ)な結末に迎えられるが、そこに至るまでの描写は、物の名前からパーツの呼称まで具体的かつ細かく、読者自身が言葉の力でシーンやイメージを立ち上げることを強く求める。
 しかも、それらの出来事の因果関係は完全に無視されている。トイレにこもってある困難と葛藤する男が主人公の「フランス人」は、典型的。途中まではフランス人のフの字も出ないのに、最後の最後で意外な登場の仕方をするのだ。
 一度読んだら忘れられない鮮烈な場面転換だが、これを支えるのは意味ではなく、倫理を超えた欲望の爆発、死と表裏一体になったエロスの噴出、つまりは生命エネルギーだ。映像の特権は意味(倫理)から自由なことだが、言葉でそれに勝負を挑もうとするかのようだ。

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