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地球を「売り物」にする人たち―異常気象がもたらす不都合な「現実」 [著]マッケンジー・ファンク

[評者]円城塔  (作家)

[掲載]2016年05月15日

[ジャンル]社会

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■議論を尻目にビジネスは進む

 地球環境についての話題はとてもデリケートで、つい感情的になりがちだ。
 温暖化の進行自体が否定されることは少なくなってきているが、それが人間の活動に起因するのかどうかの議論はまだまだ活発である。議論には十分なデータを集める必要があり、データには解釈が必要なのだからしかたがない。
 と、温暖化の原因は、それを支える証拠はなんなのかという話とは全く別に、今ここ、で生まれているビジネスがある。
 たとえば現実問題として、北極海の氷は融解している。北極まわりの航路をひらけるかもしれないくらいに。ついては、氷の下に隠されていた多くの資源が新たに採掘可能となりはじめている。そこにビジネスが生まれない方が不思議だ。
 北アメリカの西海岸が深刻な水不足に襲われていることも事実だ。コロラド川は、カリフォルニア湾につく頃にはほぼ干上がっている。集められる水は限られている。水不足は世界的な傾向だから、水が投機の対象になる日は近い。
 著者は世界二十四カ国を六年かけて取材してまわり、自分が見てきたものを、融解、旱魃(かんばつ)、洪水の三つのテーマにまとめた。
 ここに書かれていることは、少なくとも著者の目の前で起こったことで、データからの類推ではない。
 環境問題においては、最終的な結論をのんびり待つわけにはいかず、現実を見て、臨機応変に行動する必要がある。
 現状では、環境問題により柔軟に「取り組んで」いるのはビジネス側だということになりそうだ。環境問題から利益を得られる場合に、利益を上げてはいけない理由はなにか。
 利益自体を否定するのは間違っている。その利益が事態の悪化を加速させるだろうという点が問題なのだが、今の我々はまだ、それを止める方法を知らないままだし、現状さえ把握できていない。まずは、知識がなければはじまらない。
    ◇
 McKenzie Funk 米オレゴン州生まれ。ジャーナリスト。解けていく北極圏の海氷の報道でオークス賞。

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