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大山猫の物語 [著]クロード・レヴィ=ストロース

[評者]杉田敦(政治学者・法政大学教授)

[掲載]2016年05月15日

[ジャンル]人文

表紙画像

 オオヤマネコとコヨーテは双子で、元々はよく似ていた。しかし、「彼らは、互いに分化する道を選んだ。つまりオオヤマネコはコヨーテの鼻面と足を引き伸ばし、コヨーテはオオヤマネコの鼻面と尾を縮めたのである」。南北アメリカ・インディアンの諸神話に形を変えながら繰り返し登場する「双子」というモチーフは、対比によって考える、彼らの二分法的な体系を何よりも明確に示している。
 双子は他の多くの地域の神話にも見られるが、そこで双子の同一性が注目されるのに対し、インディアン神話は両者の差異を強調する。植民者たる白人も、彼らと似ても似つかないからこそ、双子の片割れとして、彼らの思考体系の中に取り込まれるのである。
 かくしてインディアンたちは白人を「客人」としてもてなしたが、白人たちはそれにどう応えたか。西洋に自省を迫る人類学者レヴィ=ストロースの主題が、最晩年のこの小品から、はっきりと見えてくる。

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