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時代の正体 vol.2―語ることをあきらめない [著]神奈川新聞「時代の正体」取材班

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)

[掲載]2016年06月12日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

 中立公正ぶっちゃって、近頃の新聞は歯がゆい。そんな不満を抱える読者に神奈川新聞の一撃は新鮮だった。「ええ、偏っていますが、何か」。同紙「時代の正体」シリーズに寄せられた偏向報道だという批判に答えての一文だった。
 本書は話題を呼んだ、その「時代の正体」の記事を集めた第2弾。2015年7月から16年2月までの分が収録されている。
 権力のメディア介入に異議を唱えるジャーナリストらの声が中心となるが、本書の白眉(はくび)は自民党が推す育鵬社の歴史と公民の教科書が横浜市や藤沢市で採択されるまでの経緯を探った箇所だろう。自民党改憲案とも重なる愛国的、軍国的な内容。背後にちらつく右翼組織「日本会議」の影。
 川崎のヘイトスピーチから、安倍晋三首相がビデオメッセージを寄せた「今こそ憲法改正を! 一万人大会」まで、今般の不穏な動きを追い、警鐘を鳴らす。空気は読まないと公言する一地方紙の面目躍如たる一冊だ。

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