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日本の女性議員―どうすれば増えるのか [編著]三浦まり

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)

[掲載]2016年06月26日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

■低レベルの比率、政治風土映す

 現在、衆議院の女性議員比率は9・5%で191カ国中156位、台湾を加えると192カ国・地域中157位という最低レベルにある。地方議会はもっと深刻で、全体の2割を超える市町村議会ではいまだに女性議員が一人もいないありさまである。
 20世紀後半から21世紀にかけて、諸外国では女性議員を増やすためのさまざまな試みがなされてきた。もちろん日本もまた例外ではなかったが、増えてもこの程度だったことになる。サブタイトルとは裏腹に、本書は女性議員を増やすことのできないこの国の政治風土の根強さを、見事に浮き彫りにしている。
 特に興味深かったのは、東アジアのなかですら、日本は下院女性議員の比率がいまや最低になっているという事実である。具体的にいえば台湾38・1%、中国23・6%、北朝鮮および韓国16・3%と、いずれも日本よりはるかに高い。韓国の女性大統領に続き、台湾でも女性総統が誕生したのはまだ記憶に新しい。
 本書では、女性議員の増加を阻む要因として、「男が主、女が従」という役割意識や、「夫を差し置いて、嫁の立場」の女性が公職に就くことを阻む伝統的家族イデオロギーなどが挙げられている。こうした分析から即座に思い浮かべるのは儒教である。儒教では「夫婦の別」を強調しているように、男女の役割の違いが説かれ、妻は夫に忠誠を尽くすことが称(たた)えられたからだ。けれども、日本より儒教が長きにわたって根付いたはずの中国や韓国、北朝鮮の方が、いまや女性議員の比率で日本を完全に逆転している。
 その背景には、通俗的な儒教理解だけではとらえきれない歴史的要因があるはずだ。日本でも、8世紀までさかのぼれば女性天皇が相次ぎ、官職の多くを女性が占めた時代があった。本書を読むと、単純に民主化したとはいえない日本政治の「後進性」に思いを致さずにはいられなくなる。
    ◇
 みうら・まり 67年生まれ。上智大学教授(現代日本政治論、ジェンダーと政治)。『私たちの声を議会へ』など。

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