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公害から福島を考える―地域の再生をめざして [著]除本理史

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2016年06月26日

[ジャンル]社会

表紙画像

 福島第一原発事故では、放射性汚染のために多くの農家が生業を絶たれた。例えば、福島県飯舘村は、工場誘致による地域開発から、地域固有資源を活(い)かした内発型地域振興に舵(かじ)を切っていた。肉用牛の振興によるブランド化を図りつつ、農業の多角化を図った。美しい農村景観を売りにしたカフェの成功にみられるように、その地域の環境、歴史、文化など「非物質的価値」を活かした取り組みも、実を結びつつあった。しかしそれらはすべて、突然の中断に追い込まれた。
 日本の公害・環境問題と地域再生の研究に取り組んできた著者は、金銭的に把握しがたい「ふるさとの喪失」被害が、原子力損害賠償で看過されているのは重大な問題だと指摘。原状回復と金銭的補償を超えて、内発的な地域発展につなげることこそ真の復興であり、その支援は加害者と私たちの責務だと結論づける。
 経済的補償に還元しきれない「地域の価値」再興の訴えが、静かな共感を呼ぶ。

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