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太陽の肖像―文集 [著]奈良原一高

[評者]大竹昭子(作家)

[掲載]2016年07月03日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

 写真家になる予定はなかったのに、最初の写真展(1956)が彼の運命を決定した。緑なき人工島・軍艦島と、桜島噴火で埋没した黒神村を撮影、「人間の土地」という題で二部構成で展示。単純なドキュメントを超えて、自然と社会機構という相対する要素を人の暮らしのなかに抽出、それを映像的に表現して戦後世代に熱狂的に迎えられた。
 初のエッセイ集には、生い立ちからデビュー、欧米での生活体験、ヴェネツィアの旅などが綴(つづ)られ、人間と土地との関わりと、それが産み落とす文化を、鋭く考察した写真家の軌跡が浮かびあがる。
 闘牛についての文章は絶品。ダイアン・アーバスとの交流を綴った一篇は、七十年代初頭のアメリカのメディア状況を生々しく伝える。四十代でロックフェスに参加、裸でテント生活するくだりも圧巻。写真家であることを絶対化せずに、壊そうとする意識をもちつつ進んできた姿に、他ならぬ写真家らしさを感じとった。

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