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自衛隊の闇 [著]大島千佳・NNNドキュメント取材班

[評者]市田隆(本社編集委員)

[掲載]2016年07月10日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

 海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」の乗組員がいじめを受けて自殺した事件で、遺族が自衛隊などに賠償を求めた裁判は8年間に及んだ。本書は、そのドキュメンタリーを制作したテレビディレクターの取材記録。丹念な取材から自衛隊組織の病理が浮かび上がる。
 遺族勝訴の判決では、いじめによる自殺を否定した海自が、重要な証拠となるいじめの調査文書を隠したことが認定された。隠蔽(いんぺい)の発覚は、現役3等海佐による内部告発がきっかけだ。
 勇気ある行為は海自の自浄能力を示すことになるはずだが、本書で詳細に再現された、3等海佐とのやりとりで告発を責める上司たちの言葉に悪寒を覚えた。「組織の中にいる人間はやっちゃいかんよ」「自分たちに非があるときでも、海上自衛隊の立場を守ることも必要なんだよ」。正義よりも組織防衛に重きを置く上司は自衛隊だけではないと思える。どこの職場にもありうる問題を浮き彫りにしたノンフィクションだ。

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