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黄昏の調べ―現代音楽の行方 [著]大久保賢

[評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)

[掲載]2016年07月24日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 新しさを求めて、クラシックから進化した現代音楽の歴史をコンパクトにまとめている。20世紀初頭の調性からの離脱や民俗音楽の採取に始まり、様々な技法や響きを開発した戦後の黄金期、70年代以降のポストモダン(単純回帰)とレイトモダン(超複雑)を経て、「現代音楽」が終わり、古典化した状況までを見通す。
 魅力的な楽曲分析の文章に誘われ、改めてラックに眠っていた十数枚の現代音楽のCDを聴き直した。その興亡を描く各章のあいだに、楽譜に書く行為ゆえに理知的な構成が重視されるという作曲論、聞き手の限界を超えるなかで創造的な受容の可能性が生まれる聴取論、新しい身体を必要とする演奏論を挟み込む。
 興味深いのは、著者は現代音楽を愛するが、ただ礼賛せず、それがなぜ嫌われるのかを徹底的に考えていること。そして終章では、人々とのコミュニケーションを回復しつつ、今を刻印する「現代の音楽」に向かう期待を述べている。

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