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アキバと手の思考 [著]粉川哲夫

[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)

[掲載]2016年08月07日

[ジャンル]社会

表紙画像

 ラジオアートという言葉に違和感を覚えるとしたらラジオとアートへの誤解があるのかも。ラジオは電波を介した双方向コミュニケーションメディアとして始まった。コミュニケーションはそれをどう行うか主体的に選ぶ創造的な技芸(アート)だ。
 ところがラジオとは放送を一方向的に受信するだけのもの、コミュニケーションには正解と定形がある、そう信じる思い込みがラジオとアートの自在で豊かな交流を阻む。
 本書はメディア研究の一方で自前の微弱出力放送局を作る「自由ラジオ」運動を実践、ラジオアーティストとして国際的に知られる著者の日常記。部品を求めて秋葉原(アキバ)をさまよい、簡単な発信機を作って他者と電波で繋(つな)がる面白さを実体験するワークショップ開催のために世界中を飛び回る。
 電子回路を手作りしながら育まれた思考はメディア技術を手の届く範囲に取り戻す。それは身体性を失いつつある情報化社会へ放たれる批評の礫(つぶて)ともなろう。

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