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「イスラム国」の内部へ―悪夢の10日間 [著]ユルゲン・トーデンヘーファー

[評者]立野純二(本社論説主幹代理)

[掲載]2016年08月07日

[ジャンル]社会 国際

表紙画像

 世界を不条理な暴力が覆っている。動機も背景も不明瞭な殺戮(さつりく)が起きるたび、「イスラム国」(IS)の名が浮かび上がる。
 実際は、いつも関与があるわけではない。ISは、理解しがたい反文明的な行動を総称する符丁の言葉として定着したかのようだ。
 本書は、謎の多いISの実態を探ろうとドイツ人ジャーナリストが挑んだ迫真のルポである。若者らはなぜ母国と家族に背を向け、ISに参画するのか。
 イラクで西欧出身のIS戦闘員らと過ごす10日間で見えたものは結局、理解不能な思想でしかない。
 ただ、彼らの心に世界のひずみの影は漂う。反テロという名のイスラム差別。内戦終結のための軍事支援がISを助長する矛盾。
 イラク戦争にも精通した著者はISを断罪しつつ、善と悪とを巨視的に考える視座を示す。「戦争は富裕者がやるテロであり、テロは貧者がやる戦争である」
 正義とは一体どこにあるのか、考えざるをえない。

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