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川原慶賀の「日本」画帳―シーボルトの絵師が描く歳時記 [編]下妻みどり

[評者]蜂飼耳(詩人・作家)

[掲載]2016年08月21日

[ジャンル]歴史

表紙画像

 江戸時代、幕府の鎖国政策のもとで唯一開かれていた長崎の出島。今年没後一五〇年のオランダ商館医・シーボルトは、さまざまな情報や文物を持ち帰り、ヨーロッパにおける日本研究の基礎を作った。
 長崎の絵師・川原慶賀は、シーボルトらの求めに応じて数多くの絵を描いた。人物、動植物、風景、行事や産業、人生儀礼など。記録的な絵だ。本書は、慶賀より二世代ほど年上の野口文龍による『長崎歳時記』の文章と、オランダ商館長・メイランの文章の現代語訳を、慶賀の絵と合わせるという構成をとる。思い切った作りだ。
 精霊流しや阿蘭陀船出航の様子など、長崎らしさを湛(たた)えた絵に、思わず見入る。また、人の一生を儀礼の面から捉えた一連の絵はどこか懐かしい。慶賀の作品のほとんどは海外にあるが、時代を超えて多くを教えてくれる。絵に残る昔のことがとても新鮮。「シーボルトのカメラ」と称される理由がよくわかる。

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