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2050 近未来シミュレーション日本復活 [著]クライド・プレストウィッツ

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2016年08月28日

[ジャンル]経済

表紙画像

■夢の成功国家、実現への秘策は

 2050年の日本。ワシントンDCを飛び立った超音速旅客機ミツビシ808は2時間半の快適な旅を終え、羽田空港に着陸。訪問客は、世界最先端の情報技術で社会システムの利便性を飛躍的に引き上げ、イノベーション大国として台頭した日本の快適さを味わう。訪ねた企業では、ここは北欧かと見紛(みまが)うばかり、女性が取締役会の半数を占めている。日本は、世界でも有数の女性が活躍する社会に生まれ変わったのだ。
 もっとも大きな変化は、人口動態だ。人口減少は2025年に上昇に転じ、2050年の総人口1億5千万人超えが見込まれる。人口増は経済成長を促し、日本経済は、年率4・5%で力強い拡大を続けるようになった。いったい、2016年と2050年の間で日本に何が起きたのか。これこそが、本書の主題だ。
 2017年、危機が勃発する。アベノミクスは失敗、膨大な公債残高の償還可能性に不安を抱いた投資家が円建て資産を売却、資本逃避が始まる。窮した日本は、IMF(国際通貨基金)管理下に入る。衝撃的なのは、サムスンによるソニーの吸収合併だ。日本産業の凋落(ちょうらく)は、ついにここまで来たのだ。国家の存立危機を前に、国会は「特命日本再生委員会」の創設を決める。委員会は、(1)女性の就業率の向上、(2)計画的な移民の導入、(3)バイリンガル化、(4)再生可能エネルギーを中心とするエネルギー独立、(5)新しい経済産業モデル、(6)連邦制導入による徹底した分権化などを提言。これらを実行に移すことにより、日本は明治、終戦後に続く3度目の経済的奇跡を自ら実現することに成功するのだ。
 以上はすべて、かつての日米貿易摩擦時の対日交渉官であり、いまや日本の将来を案じる著者のシミュレーションだ。実現するもしないも、すべては我々自身の手にかかっている。日本の社会経済システムの本質を突いた数々の問題点の指摘、重く受け止め、日本の行く末を考えたい一書だ。
    ◇
 Clyde Prestowitz 41年米国生まれ。経済戦略研究所所長。『日米逆転』は両国でベストセラーに。

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