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TOKYOインテリアツアー [著]浅子佳英、安藤僚子

[評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)

[掲載]2016年08月28日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■巨大都市の行方、多面的に批評

 ポケモンGOは、既存の都市空間に異なる情報の層を重ねあわせたことで多くの人をひきつけ、外出をうながしたが、そもそもデザインに関心をもって街歩きをするのも似たような行為である。20年ほど前に『建築MAP東京』(TOTO出版)が刊行されたとき、各地に点在する膨大な数の現代建築を鑑賞しながら、都市を体験する楽しみをもらった。本書はインテリア・デザインを紹介する初の東京ガイドである。正直、筆者も知らない物件が多く、これによって新しい東京が見えてきそうだ。
 本書は、銀座、表参道・原宿、恵比寿・白金、中央線など、九つのエリアに分けているが、それぞれの冒頭に近代以降の都市環境の変遷を記述し、街の性格とインテリアの動向が結びつくことを示唆しつつ、分析を行う。例えば、1973年にPARCOが登場し若者の街として注目された渋谷で、今後の高層化と再開発によってストリート文化は生き残るのか?と問う。すなわち、刹那(せつな)的に消費されるものと思われがちなインテリアに対し、歴史的な文脈から位置づけながら、外部の都市と切り離されたものではないというのだ。
 このガイドは、おしゃれなデザインをただ紹介するものではない。2人の著者による論考、コラム、解説は、批評的かつ思想的であり、ときには辛辣(しんらつ)だ。例えば、バブルの反動からミニマルやシンプルを好む傾向は続くが、これがデザインを更新できるのか? 古き良きアメリカの流行は9・11後の保守回帰の表れではないか? などである。
 安藤僚子は、巨大過ぎる東京が誘発する表と裏の形成システムと街の新陳代謝をもたらすインテリアの関係を考察し、都市論としても読み応えがある。また浅子佳英は、日本では近代に発見されたインテリアの概念と日本人の「内面」を相互参照しながら、多様で複雑な未来への活路を探る。インテリアの批評宣言というべき本が登場した。
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 あさこ・よしひで 72年生まれ。建築家、デザイナー/あんどう・りょうこ 76年生まれ。インテリアデザイナー。

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