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はたらくことは、生きること―昭和30年前後の高知 [著]石田榮

[評者]

[掲載]2016年09月18日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能 社会

表紙画像

 日曜カメラマンが撮るものといえば、美しい風景や日常のスナップが思い浮かぶ。引き揚げ者からもらったカメラで撮り始めたという90歳の石田榮はしかし、昭和30年ごろには高知で働く人々を追っている。
 農家や漁師、採石場の労働者たち。日曜日に撮影に出向いても働いている人たちだ。穏やかな階調、ごく自然な構図の中で目立つのは彼らの笑顔だ。いずれも重労働のはずなのに。
 自分も作業服姿で、ときには我が子も連れて、場を和ませたのだという。だから笑顔。対象をレンズで客観視するというより、撮られる側と一体化している。
 当時提唱されていた「絶対非演出」のスナップではなく、何度もポーズをとってもらったこともあるようだ。でも、そこには確かな信頼関係があるのだからウソにはならない。
 86歳での初個展以降に発表した、労働や時代のリアルな姿。これは日曜カメラマン石田の、そしてかつての私たちの自画像なのだ。

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