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鉱山のビッグバンド [著]小田豊二

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)

[掲載]2016年10月02日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

 岐阜県飛騨市の山中に位置する神岡鉱山。イタイイタイ病の発生源だった時代もあったけど、現在はニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」が設置された場所として有名だ。
 その神岡鉱山にかつて本格的な楽団があった。神岡マイン・ニュー・アンサンブル。本書はこの楽団を軸に戦後の鉱山の暮らしを追った貴重な地域史である。
 普段はヘルメットをかぶって坑内で働き、休日には楽器を握る。三交代制の職場ゆえ合同練習の時間もままならない。しかし、鉱山の楽団は産業音楽祭の常連入賞者となり、名声は中部地方一帯に轟(とどろ)いた!
 坑内事故で片方の視力を失うも、音楽に生きがいを見つけたサックス奏者。楽団に入りたくて鉱山に就職したトランペッター。そして彼らに一から楽器を教え小さなハーモニカバンドを本格的な楽団に育てたバンドマスター。楽団の40年と鉱山の興廃の歴史。地域と企業と文化が一体だった時代が鮮やかによみがえる。

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