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14歳のための宇宙授業―相対論と量子論のはなし [著]佐治晴夫

[評者]細野晴臣(音楽家)

[掲載]2016年10月09日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■数式を一編の詩と見なして読む

 音楽に携わって以来常々感じていたことだが、音楽と物理学はどこかでつながっているという気がする。音楽にも方程式のような考えがあり、過去の偉業(あるいは名曲)の蓄積の上に成り立つ発見があるなど、そこに共通点があると思うのだ。だからなのか、演奏も一流、学問も一流という学者は意外と多い。
 著者もその一人であり、ピアノを流麗にこなす。もし自分にも数学的素養があれば物理学者になれたのかもしれない。しかし数式を見ると気が遠くなる人間にはむずかしいだろう。いったいどこで数式が苦手になったのか。本書の表題にある「14歳」という年齢にはどんな意味が込められているのだろう。
 中学生の頃の自分に当てはめてみれば、確かにサイエンスフィクションに没頭していた。宇宙の謎や世界の不思議な出来事に対する好奇心も旺盛で、知識の吸収力も強かった。とはいえ空想科学から物理学への道は1本ではない。「神の数式」といわれる数学への理解力が必須なのだ。
 ところが著者は、数式を一編の詩と見なして読めばよいという。季節や月ごとの時候から始まる各章には宇宙や星の物語が綴(つづ)られ、複雑な交響曲の上に乗る旋律を心地よく辿(たど)るように、難解な物理学を背景にした相対論や量子論を解きほぐす。その手法はまさに「物知り博士」から14歳の少年少女に届く手紙のようだ。
 これなら物理学に近づける。本書からは好きな物理学者ガモフの面白おかしい試みとは別の、感性や物語性を重視した著者の「宇宙論のソナチネ」という考え方がくみ取れる。また本書には漢字にルビが振ってあるおかげで、14歳の少年の気持ちになって読めた。
 物理学に深く興味を持った読者には重要な方程式も網羅されている。著者が映画「コンタクト」の原作者で天文学者・SF作家のカール・セーガンにインスピレーションを与えたという伝聞にもうなずける。
    ◇
 さじ・はるお 35年生まれ。「ゆらぎ」研究で知られる理論物理学者。著書に『14歳のための時間論』ほか。

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