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松山俊太郎 蓮の宇宙 [著]松山俊太郎 [編]安藤礼二

[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)

[掲載]2016年10月09日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 松山俊太郎は気になる存在だった。生前の彼と面識のあったファンたちがその怪人ぶりを実に情熱的に語るのを聞いていたからだ。
 本書収録の対談「蓮華(れんげ)宇宙を語る」では博覧強記の松岡正剛が「とうてい対談になりっこない」とこぼすほど松山の知識量は圧倒的だ。しかもその言葉は豊かな官能性すら帯びるのだ。
 だが彼の凄(すご)みはそれらに尽きない。『華厳経』の世界の広大さを冗談のように膨大な十のべき数表記で試みる松山が伝えたかったのは、私たちの宇宙がそれに比べれば「素粒子」並みに小さいということだろう。学究の果てに至った世界の広がりの認知の下、己の微小さをわきまえつつ思いのままに漂い、遊ぶ。数々の「伝説」を生んだ、そうした松山の自由の思想に触れる機会を本書は用意する。
 安っぽいカリスマが跋扈(ばっこ)する時世の中、古代の神話と繋(つな)がることで神話的存在となった希代の怪人との出会いを読者にも経験して欲しいと思う。

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