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ルポ 貧困女子 [著]飯島裕子 貧困の現場から社会を変える [著]稲葉剛

[評者]星野智幸(小説家)

[掲載]2016年10月16日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■弱者への無理解、改めるために

 2カ月ほど前、経済的事情で進学を断念する女子高校生がNHKのニュースで取り上げられたとき、映っていた自室の所持品が安価ではないなどの理由で非難された。貧困を解説した本は十分存在するのに、いまだに無理解なバッシングが相次ぐのはなぜなのか。
 『ルポ 貧困女子』で著者は、女性の貧困で取り上げられるのは、風俗に頼らざるをえなくなったケースが多いが、「衝撃的な物語が展開されるほど、『女性の貧困』は特殊なものとして捉えられ、個人に起因した問題として処理されてしまう傾向にある」と指摘している。そもそも可視化しにくい女性の貧困をイメージ化するときに、この社会に強固に働いている男性目線からの把握が真っ先に受け入れられるというわけだ。
 その結果、「『救われるべき貧者、弱者』として認められない限り、“ダメ人間”と烙印(らくいん)を押され、終わりのない努力を強いられる」。
 だが現実には、貧困状態にある女性の実態は極めて多様だ。本書は、地味で等閑視されやすい若年独身女性たちに寄り添い、深い共感とともにその姿を描き出す。成人後も実家暮らしは普通だと思われている女性の場合、貧困は「家事手伝い」「負け犬」、家族の絆を強制しかねない「無縁社会」などの言葉に隠れてしまう。そうして孤立し分断された女性たちを、つなぐ場が求められている。
 そのためには、弱者の側が自ら苦境を証明しないと理解されないというこの現状を覆す必要がある。その指南書が『貧困の現場から社会を変える』だ。対症療法的な支援活動だけでなく、社会構造そのものを変える根本治療(ソーシャルアクション)に踏み込むためには、前提を疑う必要がある。例えば、「自立」という言葉があるが、これは行政が描いたコースで就労することではなく、自分で生活を選べる自己決定権が保証された状態を指すべきだ、と著者は説く。
 転換の機は熟している。
    ◇
 いいじま・ゆうこ ノンフィクションライター。▽いなば・つよし 自立生活サポートセンター・もやい理事。

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