大学入試改革―海外と日本の現場から [著]読売新聞教育部

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)  [掲載]2016年10月23日   [ジャンル]教育 社会 

表紙画像 著者:読売新聞教育部  出版社:中央公論新社

■投資を惜しまず多様な人材獲得

 2020年度から小中高校で順次始まる次期学習指導要領の目玉は、「アクティブ・ラーニング(能動的学習)」だ。明治以来の詰め込み教育から脱却し、対話型の21世紀型学習に大転換する、画期的なものだ。だが、大学入試が旧来型のままなら、せっかくの改革も台無しになる。大学合格のために受験生は結局、知識の多寡を競わされるからだ。学校教育における能動的学習への移行は、大学入試改革なしには完結しない。
 本書は、世界から注目される米国の大学入試、それに範をとった台湾、韓国における入試改革、そして日本でも始まった大学入試改革を、国際比較の中で丁寧に描く優れたリポートだ。
 米国の大学入試が日本と大きく異なるのは、入試の点数といった単一尺度ではなく、エッセー(小論文)、高校の成績と課外活動の報告、面接など様々な材料を用い、多角的に人物を評価する点だ。印象的なのは、多様性こそが価値だとの認識が共有されている点である。金太郎飴(あめ)のように一様な学生ではなく、異なる出身地、性別、学問的関心に基づいて、多様な価値観、経験、考え方をもつ学生を受け入れる。そこから刺激と新しいアイデアが生まれ、大学をさらなる発展に導くというわけだ。
 こうした入試を行うため、米国の大学は多数の優秀な入試専門スタッフを雇用し、彼らに学生選抜の権限を与え、入試業務に専念させている。よい入試を行うには、それにふさわしい投資が必要なのだ。
 日本の大学も近年、推薦・AO入試の拡大など入試改革が進展し、優秀な学生獲得で成果を上げ始めた。背景には、学生のバックグラウンドの均質化、入学後の学習意欲の低迷、そして主体的・能動的な学習への不適応といった現状への大学側の危機感がある。大学合格で燃え尽きる受験秀才ではなく、入学後も高い意欲をもつ潜在力豊かな学生を見出(みいだ)すには、その選抜方法の変革は不可避であろう。
    ◇
 よみうりしんぶんきょういくぶ 13年、読売新聞東京本社編集局に発足。文部科学省や教育関連の取材を担当。

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