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死神の報復―レーガンとゴルバチョフの軍拡競争(上・下) [著]デイヴィッド・E・ホフマン

[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)

[掲載]2016年10月23日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

 米ソ保有核弾頭が6万発に達した1985年。レーガンとゴルバチョフは初めて握手を交わし、増え過ぎた核の削減交渉を始める。
 立場も思惑も異なる2人だがレイキャヴィク会談では核兵器廃絶まであと一歩に迫った。その後、ソ連邦は崩壊。核削減が進まぬ一方でソ連時代に密(ひそ)かに開発されていた生物化学兵器が明らかに。その流出対策に苦戦する国際社会の動きまでを子細に調査した本書は2010年のピュリツァー賞に輝いている。
 冷戦構造を、英単語の頭文字を並べるとMAD(狂気)となる相互確証破壊体制と呼んだ諧謔(かいぎゃく)の精神こそ、思えば死神に憑(つ)かれたような国際状況の中で醒(さ)めた理性を感じる貴重な例外だった。世界の破滅をかろうじて食い止めたのも最後の最後で理性の踏ん張りがあったから。二元方程式的だった冷戦期と違い、今や国際的な問題は多元方程式化しているが、公式では求められない解をそれでも求め続ける必要を本書は示している。

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