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水力発電が日本を救う―今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる [著]竹村公太郎

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)

[掲載]2016年10月30日

[ジャンル]経済

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■実は資源大国、有効に使おう

 日本は資源の乏しい国だと、あなた、思っていませんか。しかし、日本が途方もない資源大国だったとしたら? 資源とはすなわち山と雨とダムである。
 アジアモンスーン地帯の北限に位置する雨の多い気候。列島の7割が山地という雨を貯(た)めるのに適した地形。加えて近代化の過程で建設された多数のダム。三つがそろった日本は奇跡のような国。〈五〇年後、一〇〇年後、そして二〇〇年後の日本にとって、水力発電は必ず必要になる〉と著者の竹村さんはいう。
 でもさ、ダムって環境破壊の最たるものじゃん?
 そう、現代はもう巨大なダムをつくれる時代ではない。これはダムを増やすのではなく、既存のダムを生かそうという話なのだ。
 逆にいうと、水域の人々に多大な犠牲を強いて巨大なダムを建設するのが近代のやり方だった。しかし「治水」と「利水」という矛盾した目的を担わされた多目的ダムは、時代遅れな法律のせいで、水を半分しか貯められず、力が十分に発揮されていない。運用と多少の改修で電力量は倍増するのに、有効に使わなければ犠牲を払った先人に申し訳ないではないか。
 そうはいうけど、20世紀のダムなんて老朽化してんじゃない? ところが、明治以降の大きな震災でダム本体が壊れた例はひとつもない。鉄筋を入れず基礎が岩盤と一体化し、ビルとは桁ちがいの厚みを持つ日本のダムは〈半永久的に使えると断言できる〉。
 「ダム屋」を自称する著者は旧建設省に入って三つの巨大ダムをつくった河川と土木技術のプロ。土木の知識ゼロの私たちにも十分理解できる内容で、しかも画期的におもしろい。
 化石燃料はいつか枯渇する。原子力は安全性に疑問がつく。であればこその水力発電。読後には〈ダムに貯められた雨水は石油に等しい〉という言葉がハッタリでも誇大妄想でもなく、実現可能なプランの指針に思えてくるだろう。
    ◇
 たけむら・こうたろう 45年生まれ。日本水フォーラム事務局長。著書に『日本史の謎は「地形」で解ける』など。

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