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エスカルゴ兄弟 [著]津原泰水

[評者]末國善己(文芸評論家)

[掲載]2016年10月30日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 幅広いジャンルで活躍している著者の新作は、料理小説。高級なエスカルゴから油揚げにチーズをはさんだ庶民派まで、おいしそうな料理が出てくるので、読めばお腹(なか)がへるだろう。
 出版社をリストラされた柳楽尚登は、カメラマンの雨野秋彦が、実家の立ち飲み屋を改装したエスカルゴ料理店の料理人になる。
 秋彦と三重県のエスカルゴ養殖場を訪ねた尚登は、伊勢うどん店の娘・榊(さかき)桜に一目ぼれ。尚登の実家は香川県の讃岐うどん店で、宿敵の伊勢うどん店の娘との恋は許されなかったのだ。
 強引な秋彦に振り回されていた尚登が、店のトラブルを解決し、禁断の恋を育み、家族と向き合うなどしながら成長し、秋彦との絆も深めていく展開はスリリングで、コース料理のように笑いも涙も堪能できる。
 現在は、誰もが尚登のように畑違いの職場に放り込まれる可能性がある。それだけに、悩みながらも新たな道に進もうとする尚登には勇気がもらえるはずだ。

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