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「沖縄の乱―燃える癒しの島」書評 沖縄が怒っているわけは

評者: 中村和恵 / 朝⽇新聞掲載:2016年10月30日
沖縄の乱 燃える癒しの島 著者:野里 洋 出版社:河出書房新社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784309247687
発売⽇: 2016/08/19
サイズ: 20cm/229p

沖縄の乱―燃える癒しの島 [著]野里洋

 沖縄はいま怒っている。米軍統治時代に移住し、長年沖縄を見つめてきた著者が、その理由をわかりやすく説く。普天間飛行場移設問題を核に、第2次大戦から現在までの状況を顧み、政治家や識者らの発言を分析、沖縄の経験をそれぞれ異なる立場から考察する。
 米軍の沖縄での激戦経験と尾を引く占領意識、土地強制接収の経緯や日米地位協定による法律の壁、現地を知らない為政者や高官との齟齬(そご)。難しい問題をアクセス可能にするのは、地元住民ならではの具体性と明確な主張、感情に流されない平明で客観的な文章だ。
 ウチナーンチュは怒るだけでなく、笑ってもいる。ハワイ生まれの沖縄二世作家J・シロタ原作の真珠湾攻撃を扱った喜劇は、米国で高く評価された。交渉を避けていては異文化折衝の現場で立場を失う、大国にもまれてきた日本最南県はそれをよく知っている。激変する世界で米軍も、沖縄基地の意味も変化している。目を開いて考え続けたい。