ひとが優しい博物館―ユニバーサル・ミュージアムの新展開 [編著]広瀬浩二郎

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)  [掲載]2016年11月20日   [ジャンル]社会 

表紙画像 著者:広瀬 浩二郎  出版社:青弓社

 「すべての人の好奇心のための博物館」を目指す、ユニバーサル・ミュージアム論の公開シンポジウム報告集。見常者、触常者、触文化、手学問と、興味深い言葉がぽこぽこ顔を出す。
 冒頭の広瀬浩二郎と相良啓子の対談がおもしろい。見えないけど聞こえる人と聞こえないけど見える人の世界観・人間観が、こうもかけ離れているとは。「障害」というくくり方の粗雑さを思い知る。手話民族のろう者と、視覚情報を聴覚触覚に翻訳する必要のある盲者の対話。まさに異文化コミュニケーションだ。
 美術館・博物館はいま、目に偏らない多様な知覚による知の経験の可能性を探っている。本書にはそうした試みが、体験型の歴史講座やツアーも含め、数多く報告されている。立体コピーで絵画を学ぶ。博物館で煎茶を味わう。第五福竜丸の元乗組員から説明を聞きながら船を触る。「香るメガネ」で写真展を嗅ぐ。丁寧に深く知り楽しむ生き方が示唆されている。


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