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メイキング・オブ・アメリカ―格差社会アメリカの成り立ち [著]阿部珠理 ブラック・ホークの自伝―あるアメリカン・インディアンの闘争の日々 [著]ブラック・ホーク

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)

[掲載]2017年01月15日

[ジャンル]歴史 社会

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■力=正義という信条を問う

 オバマからトランプへ。ケニア出身の父を持つ初の黒人大統領から、排外的言動で世論を煽(あお)る白人「不動産王」大統領へ。アメリカ合衆国はしばしば、両極端ともいえる相貌(そうぼう)を見せる。いまアメリカ人の心性と、その成り立ちが、とても気になる。
 アメリカは持たざる者にもチャンスがある自由の国といわれてきた。だが最初からアメリカ社会は不平等だった、と『メイキング・オブ・アメリカ』は明言する。このコンパクトな米国史概説で、アメリカ先住民研究を専門とする著者は、アメリカ植民地のゼロ地点を清教徒(ピューリタン)の新天地ではなく、先住諸民族の受難におく。崇高な建国神話のヴェールを剥(は)ぐと、「清掃と植民」つまり先住民を追い払い土地を奪って稼ぐ、強者こそ正義という暴力の歴史が姿を現す。
 自らを正義と信じ、非正義を容赦なく断罪する「神の国」アメリカの、ときにヒステリックなまでの清教徒的不寛容は、魔女裁判や先住民惨殺といった昔の話にとどまらない。冷戦時代の「赤狩り」、いまや「共和党の最強の組織票」といわれるキリスト教右派の勢力、さらに「テロとの戦い」の旗印の下の異教徒排斥にも通じる。
 勤勉と節約を重んじるプロテスタントの倫理は、自らを助けない者、努力し勝ち上がっていかない者を容赦なく切り捨てる気風も育んだ。だが19世紀後半の「金ぴか時代」、産業の大動脈となる大陸横断鉄道は、安く買いたたかれた移民労働者の努力で築かれたのだ。一方「泥棒貴族」といわれた成金(なりきん)の多くは、すでに財を成していた。
 格差社会アメリカで中産階級が増え、解放運動が花開いた60年代は、むしろ例外的な時代だったのだ。愛と平和を求めたヒッピーのコミューンがモデルにしたのは、先住民の共同体。アメリカ人はインディアンを、ずっと気にかけている。入植者の子孫は心のどこかで、ここは元来、彼らの土地と意識している。
 勇猛果敢なインディアンの戦士ブラック・ホークの名は、軍用ヘリの名前にもなっている。彼の話を通訳しまとめたという『ブラック・ホークの自伝』は19世紀のベストセラー。英米両国間で生きる道を探り、文字を知らず羽ペンを持つのも初めての手で「サイン」させられた条約の無効を訴え、信じ、裏切られ、戦い、彼は生き抜いた。
 アメリカ人のやり方はおかしい、と彼はいう。指揮官は部下にばかりボートを漕(こ)がせ、自分は舵取(かじと)りもしない。見返りのないことはせず、攻撃されていないのに攻撃してくる。戦闘の大義は二つだけ、身内の殺戮(さつりく)と狩場(かりば)の侵害だと彼はいう。自分たちにも正義がある、という彼は、力=正義という信条を問う。
    ◇
 あべ・じゅり 51年生まれ。立教大学教授。『アメリカ先住民』ほか
 Black Hawk 1767~1838年。ソーク族のリーダーの一人。1833年、通訳アントワーヌ・ルクレールが口述筆記し英訳、出版。

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