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菅付雅信「写真の新しい自由」書評 疾走感あふれる写真論

評者: 武田徹 / 朝⽇新聞掲載:2017年01月15日
写真の新しい自由 著者:菅付 雅信 出版社:玄光社 ジャンル:芸術・アート

ISBN: 9784768307809
発売⽇: 2016/10/11
サイズ: 19cm/287p

写真の新しい自由 [著]菅付雅信

 私たちは日々、大量の写真を見ている。ネットにはプロ、素人の別なく投稿された写真が氾濫(はんらん)し、広告写真に目を向けずに街を歩くことは困難だ。
 芸術にも商業にもなり、歴史に残るものもあれば、泡のように消えるものもある写真。だが優れた写真には新しい、より自由な世界の見方を「言葉よりも速く提示」するという共通点があると著者は考える。そして写真という「速い」メディアにふさわしい言葉を選び、本書を綴(つづ)った。
 結果的に本書は「大御所」写真家を相手にし続ける「遅い」写真論とは異質の疾走感に溢(あふ)れ、時にせわしなさをせつなく感じるほどだ。だが、その筆致だからこそ、注目すべき海外写真家の消息や広告写真の最新動向、若手写真家の新しい創作姿勢などを数多く紹介する「写真のジャーナリズム」たりえた。写真が獲得しつつある「表現の自由」を確かに受け止めているか、読む者に問いかける力を持つ一冊だ。