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代表の概念 [著]ハンナ・ピトキン

[評者]齋藤純一(早大教授)

[掲載]2018年01月21日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

■指導者を支持する理由問われる

 「代表」は、政治学が近年活発に論じているテーマの一つである。
 例えば「代表される者」がまず存在して彼らが「代表する者」を選ぶのではなく、逆に代表する者が代表される者を構築する。代表者は選挙での公約を履行するというよりも、むしろ次の選挙で票を集められるような政策を実行する。あるいは、選挙よりもランダムな選択のほうが市民の多様性をよりよく反映する代表者が得られる、といった議論がある。代表を論じる際に、世界の研究者がほぼ必ず参照してきたのが『代表の概念』である。
 本書は、日常の用法に照らして代表をいくつかのモデルに分ける。(1)有権者が代表者に一定期間任意に行動する権限を与える「権威付与」型(2)代表者にその行動を説明する責務を負わせる「説明責任」型(3)代表者が有権者の利益を忠実に写し出す「描写」型(4)代表者が有権者を惹(ひ)きつけて自分の行動への支持を確保する「象徴」型、そして(5)代表者が有権者に代わって、その利益に適(かな)うよう実際に行動する「活動」型である。
 注目したいのは、半世紀前に書かれた本書がすでに、政治的代表は政治家が選挙時に有権者に示した公約を履行するという伝統的な理解には還元できない、と見ていることである。たとえば、象徴的な代表においては、代表される者や観衆の「心に働きかけ」、感情的な同一化を引きだすような象徴を創出することを通じて代表関係が構築、維持される。
 そうしたポピュリズムとも親和的な代表に対して、著者は、「指導者を受け入れるのに十分な理由があるのかを問う」必要を指摘する。代表関係は選挙後も持続するのであり、代表者を支持するだけの理由があるかどうかが問われ続ける。
 代表制そのものへの反発がこのところ強くなっているが、本書は、直接(電子)民主主義には代替しえない代表の意味と意義について考えるための古典である。
    ◇
 Hanna Fenichel Pitkin 31年、ベルリン生まれ。米カリフォルニア大名誉教授。ヨハン・スクデ政治学賞受賞。

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