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アメリカの汚名―第二次世界大戦下の日系人強制収容所 [著]リチャード・リーヴス

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2018年02月04日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■憎悪のあらゆる構図を追跡調査

 1941年12月、日本軍の真珠湾奇襲攻撃により太平洋戦争が始まった。このときからアメリカ国内(とくに西海岸)に住む日系アメリカ人はどのような状況に置かれたか、その詳細なリポートがアメリカ人ジャーナリストによってまとめられた。「一二万人以上の日系アメリカ人が自宅から追い立てられ、第二次世界大戦のあいだ中、国内一〇カ所の『転住センター』といくつかの刑務所に抑留」されたのである。
 転住センターとはいえ砂漠に建てられたその収容所は、まさにジャップと謗(そし)られる敵国人のゲットーであった。ここには財産をすべて奪われた日系アメリカ人が集められ、世代による意識の違い、所内の協力者へのリンチ、さらには巡視のアメリカ軍兵士からの侮辱と、それこそ憎悪のあらゆる構図がある。著者はこの収容所をアメリカ近代史の汚点とみるだけでなく、戦時下の人間心理の歪(ひず)みを問題にする。
 ルーズベルト大統領によって出された命令(42年2月)。それに先立ち、コラムニストのリップマンの「外と内からの攻撃」という一文はワシントン・ポストにも掲載され、「日本人の血を引く全員」を「戦略的地域から即刻一斉退去」させる方針が、国会議員らによって確認される。アメリカ国民の真珠湾攻撃への怒りは、日系アメリカ人に向けての暴力と化す。収容所内でも、日本軍の攻撃を讃(たた)える1世とアメリカに忠誠を誓う2世との間には、この状態をどう受けいれるかの対立があった。
 著者は、日系2世を含む第100歩兵大隊(第442連隊と合体)の欧州戦線でのバンザイ攻撃や2世語学兵の戦い、2世兵士の個々の体験を追跡調査している。戦後、アメリカ国内で日系2世兵を見る視線の変化についてもふれている。第2次世界大戦の裏側にひそむそれぞれの国の「戦争犯罪」の総括を本書は教えている。著者の執筆の姿勢に学ぶべき点は多い。
    ◇
 Richard Reeves 36年生まれ。ジャーナリスト、コラムニスト。ニューヨーク・タイムズ政治部長などを歴任。

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