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宿命の戦記―笹川陽平、ハンセン病制圧の記録 [著]高山文彦

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)

[掲載]2018年02月04日

[ジャンル]社会

表紙画像

 皇室が国内のハンセン病患者に多大な関心を寄せてきたことはよく知られている。だが世界ではいまなおハンセン病が完全に制圧されていないばかりか、差別の構造が依然として残っている。病の根絶と差別撤廃のため精力的な活動を続けているのが、日本財団会長の笹川陽平である。
 本書には、著者が2010年から笹川と20カ国を回り、患者と接した驚くべき体験が綴(つづ)られている。なぜ笹川は、差別撤廃にこだわるのか。その思いは、右翼の大物と呼ばれ、A級戦犯の容疑者とされた父、笹川良一が着せられた汚名を晴らしたい思いに重なるという。興味深い分析だ。
 著者は、ハンセン病の作家、北條民雄の評伝を書いて以来、この問題に強い関心をもってきた。本書の最後では、ハンセン病の歴史について触れている。近代日本で患者を強制隔離する国策に皇室も一役買っていたという重い事実から、著者は目を背けない。公平な視点を感じさせる。

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