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深読み日本文学 [著]島田雅彦

[評者]斎藤美奈子 (文芸評論家)

[掲載]2018年02月04日

[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

表紙画像

 島田雅彦先生は突飛(とっぴ)な先生だ。文学を語るのにホモ・サピエンスだけが獲得した言語能力の話からはじめ、昨今の政治家や官僚の不誠実きわまりない態度を例に〈そうしたエセ文学的な「言葉の悪用」をする人たちを批判するのが、文学の本来の役割なのです〉と断じる。ここまでいわれちゃ、文学ファンならずとも読むしかあるめえ。
 カリスマ予備校講師もかくやの話術は各論でも変わらない。西洋の女たらしが女性を狩りの対象とみる狩猟採集民族型のドン・ファンなら『源氏物語』の光源氏は農耕民族型のドン・ファンだ。井原西鶴や近松門左衛門はライトノベルの元祖だ。樋口一葉は多様な階層の人々を描くことで、図らずも日本の民主化に成功した。谷崎潤一郎は一生変態、坂口安吾は一生権威を疑い続けたが、ゆえに戦争の影響を受けなかった。
 先生曰(いわ)く〈文学は実学である〉。文学は暇人の趣味ではなく批判精神を磨く道具だとの説に目が覚める。

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